株式会社 仲野メディカルオフィス 仲野 豊
― ・し・て・ん・(1) ―

縮む日本。患者減少時代に突入した日本の医療

はじめに

 第二次世界大戦後の1947年から1949年までに「団塊の世代」と呼ばれる第一次ベビーブーム(総出生数800 万人)が起こりました。その後、「団塊の世代」が適齢期を迎え、1971年から1974年まで「団塊ジュニア」が次々と誕生する第二次ベビーブーム(同816万人)が到来し、日本は高度成長期とともにとても活気に満ちた時代に突入しました。それから40年――。国立社会保障・人口問題研究所は、わが国の人口がとても寂しくなるという推計を示しました。「日本の地域別将来推計人口(2013年3月推計)」です。

現象論」から「現実論」へ

 遠い将来になるほど精度が低くなるのですが、この推計は2010年度推計値(2007年時点の推計)と2010年度国勢調査の結果を照らし合わせてみても誤差が88 万人ですから、精度が高いと言えるでしょう。今回の推計では2010年の国勢調査を基に、5年ごと30年間の推計値が算出されています。特徴的なことはまず市区町村別推計を行い、その結果を合計して都道府県別の人口推計を割り出していることです(ただし、福島県においては全県推計のみ)

 これまで将来人口を論じる際、「高齢化が一層進む」「年金など社会保障の支え手が少なくなる」といった現象論に終始していましたが、人口減少の確証がつかめたのですから、これからは「どう立ち向かうのか」といった現実論に議論の軸足を移すべきでしょう。

そして患者がいなくなる

 わが国の人口は2010年比で、▽2020年:3.1%減、395.7万人減▽2025年:5.8%減、739.9万人減▽2040年:16.2%、2078.2万人減が見込まれています。つまり2020年には2010年の四国4県相当、2025年には中国5県相当、そして2040年には東京都と埼玉県の1都1県相当の人口が姿を消すわけです。

 これらを指数化したものが下表で、社会保障と税の一体改革が目指す2025年には東京都と沖縄県以外の45道府県で人口が減少し、2035年には47都道府県で人口が減ります。

 2020年に1割以上減るのは、秋田県1県のみですが、2025年には青森県、岩手県、山形県、福島県、新潟県、山梨県、和歌山県、鳥取県、島根県、山口県、徳島県、愛媛県、高知県、長崎県、鹿児島県を加えた16県に及びます。

 また、2割以上減少するのは、2030年に2県、2035年に13県ですが、2040年には過半数の25県に達する見込みです。中でも青森県と秋田県では3割以上も減少してしまい、経済にも大きな影響が出て税収や保険料収入にも直結します。その結果、税収や保険料で成り立つ医療保険や介護保険にも変化の波が押し寄せてくることでしょう。もちろん、患者数は激減していきます。

<都道府県別将来推計人口と指数>

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 言うまでもなく、医療も介護も、患者や住民が居なければお手上げです。減少した人口に受療率を掛け合わせると患者数の推計ができます。11年3月の患者調査によると、全国(宮城県の石巻医療圏、気仙沼医療圏及び福島県を除く)の受療率(人口10万対)は、「入院」1,068、「外来」5,784 ですから、▽20年:入院4.2万人減、外来22.9万人減▽25年:入院:7.9万人減、外来42.8万人減▽40年:入院22.2万人減、外来120.2万人減と推計できます。もっともこの推計には医学の進歩や年齢階級別受療率が反映させていませんので、あくまで目安程度にとどめておくべきでしょう。

そして人材不足が深刻になる

 人口減社会は患者等が減るだけでなく、医療や介護の担い手不足をも引き起こします。ただでさえ人手が足りない医療・介護分野を魅力ある職場とするための工夫が一層求められることでしょう。そのためにも、診療報酬や介護報酬を適切に評価してもらいところですが、ご存じのように財源となる税金・保険料・患者自己負担は日本の経済が立ち直ってもらわないことには確保できない構造なのです。

“縮む日本”の中で地域における存在感を高める事業展開が今後も求められます。

※本稿は alfresa NEWS への掲載原稿を加筆補正したものです。