続・縮む日本。将来推計が訴える全面見直しの必要性
受療予測で医療経営のチェックを
将来的に全ての都道府県において人口が縮み、患者数も2040年には入院22.2万人、外来120.2万人もの減少が見込まれると前回に記しました。その際、誌面の都合から省略した2011年3月時点の「患者調査」(宮城県の石巻医療圏、気仙沼医療圏及び福島県を除く全国)の中から、性・年齢階級別にみた受療率(人口10万対)を抜粋したのが下表です。
<表1>性・年齢階級別受療率(2011年3 月時点)
入院は男女とも年齢階級が上昇するほど高くなる傾向にあります。一方、外来は男性80~84歳、女性75~79歳をピークに減少へ転じます。一般的に「高齢者増=患者増」と捉えることができるのですが、外来に関しては当てはまらないのです。まして、人口減が顕著となる地域で上記年齢層以上の患者が増加すると、外来の来院確率が低下するはずです。ただ、男女とも45歳以上になると、右肩上がりの傾斜角が急勾配になります。これらの世代を対象とする一般内科の場合、自院の診療圏にどの程度いるのか、傾向的には増加か減少か――。しっかり把握しておくべきではないでしょうか。
その結果、自院が対象としている年齢層の受療予測に満足できないのでならば、①診療圏域の拡大や新たな疾患の掘り起し等による「患者増対策」、②新たな検査機器等の導入や医療職の採用による「診療単価増対策」を図るべきでしょう。「医療収入」=「患者数」×「診療単価」という方程式が医療経営を規定するのですから・・・・・。
激変する地域の医療ニーズ
もう少し具体的に事例をあげて見てみましょう。筆者の先祖が眠る京都郊外エリア2市1区の人口は28万人ですが、予測が的中すれば2020年:4.1%減▽2030年:11.1%減▽2040年:20.0%減と加速度的に減少します(次表)。
<表2>京都2 市1 区の人口減少率(抜粋)
0~14歳人口の推移は2020年:19.2%減、2030年:35.5%減、40年:44.5%減と小児診療を直撃します。45歳以上に目を転じると、2020年:9.7%増、2030年:9.3%増、2040年:2.4%増と2020年代にピークを迎えます。性別でみると、85歳以上男性が2020年から2倍、3倍、4倍に増え、女性は男性よりも緩やかな増加速度とは言え、数の上では男性を大きく上回ります。
将来推計が語りかけるもの
呼吸器、眼や運動器など、高齢者に多い疾患の医療ニーズが爆発的に増加するのですから、その対応も迫られることでしょう。これは何も診療体制だけに限りません。待合室の掲示物の文字サイズ・色使いも含めた見やすさ、立ち上がりやすい肘つき椅子などの対応が将来推計から透けて見えてこなければなりません。
縮む日本では医療や介護の担い手不足も生じてきます。既に過疎化が進む地域では、ニーズがあるのに従事者不足が起きています。特に看護補助や介護職の採用対策は、これまでの景気回復の遅れに救われてきたような面がありますが、今後、過疎地以外でも景気回復と人口減が表面化する前に、万全を期しておきたいものです。