株式会社 仲野メディカルオフィス 仲野 豊
― ・し・て・ん・(3) ―

マンパワーインパルス

 医療機関の従事者は医師や看護師をはじめ、働く人の大半が国家資格者で構成されています。国家資格ですから、毎年実施される国家試験に合格する必要がありますが、この資格試験の合格率が毎年バラバラなのをご存じでしょうか。病院の採用担当は、職種別合格率を見越して、翌年度の採用数を決定しますが、採用計画を立てる上で合格率の傾向と対策を練る必要がありそうです。

揺らぐ採用計画と経営計画

 厚生労働省では、医療職の国家試験の合格発表を毎年3月から5月にかけて順次行っています。同省のホームページによると主な医療職の2012年と2013年の傾向値は次表のようになっています。

<表1> 医療職の合格率と合格者数

 表1には含まれていませんが、2013年の医師の合格率は前年比▲0.4%の89.8%、合格者数は8人増の7,696人でした。

 相変わらず人手不足が続く看護師は合格率が9割程度で毎年5万人近く誕生しているものの、病院では年間約10万人以上が離職、約8万人が再就業しており、大量採用・大量退職の悪循環を繰り返し、需要に追い付きません。6年制となって2回目の合格年次を迎えた薬剤師は8,929人(+288人)誕生しましたが、試験問題が辛口になったため合格率は▲9.2%もダウンしています。

 近年、急性期病院で採用が活発な臨床工学技士、社会福祉士、管理栄養士は、それぞれ1,779人(265人)、8,058人(▲3,224人)、7,885人(▲2,595人)と、社会福祉士及び管理栄養士の合格者数が激減しています。

 毎春、合格率を踏まえた採用者数を割出し、新入職員を迎えたいものですが、合格率にバラツキがあると、採用計画に狂いが生じてしまいます。そうすると、経営計画の修正を余儀なくされます。病院の診療報酬評価が、人を増やさないと高い点数が得られない仕組みに改められているからです。とりわけ急性期病院ではその傾向が顕著で、採用見込みに穴が開くこと自体が経営計画に穴を開ける、表裏一体の関係になっています。

揺るがないマンパワー増強施策

 下図は平均在院日数を短縮したい厚労省が近年よく用いる図です。

<図1> 平均在院日数と1床あたり職員数

 

 この図は縦軸に平均在院日数、横軸に1床あたり従事職員数をとり、各国の経年変化を示したものです。要するに「日本も1床あたり職員数を増やしながら在院日数を短縮させていくぞ」ということを示唆したものです。ただ、アメリカやイギリスのような1床あたり5人超というのは極めて非現実的ではないでしょうか。厚労省の幹部は「1床あたり2.5人を目安」と発言しており、既にこのラインに達した病院では「休日の診療も平日とほぼ診療密度で行うことが可能になり、休日が入るから在院日数が伸びるということがなくなってきた」と述べています。

 急性期病院では1床当たり職員数が1倍強のところから2倍強のところまでバラバラです。様々な医療関連職を配置するチーム医療の評価等――。ここ数年の診療報酬改定と同様、今後も職員数を増やしていくような増員政策が継続されるに違いありません。

 だとすれば、更衣室のロッカー数の確保、職員保育所の整備・拡大、会議室の増室といったハード面に加え、採用・教育研修面の体制強化、メンタル対策などのソフト面の配慮も必要です。

 経営企画部門だけでなく、人事・労務部門にも戦略性が問われています。