モティベーションを下げる組織のイマイチ君
足を引っ張るイマイチな人物
新人職員が組織に馴染むまでには通常数カ月は必要です。新たな仲間を“活躍できる人財”とするためには、組織全体が“暖かい目”で自院の姿勢を教え、成長を育むことが最も大切です。医療界で最も大事なモティベーション向上の秘訣もここにあります。
しかし、パレートの法則にあるように職場の同僚や先輩、上司のうち見本となる“活躍する人”はほぼ2割で、残り8割の“鳴かず飛ばず”や“足を引っ張る”側で、彼らが妙な手本を見せると新人の成長を妨げてしまうどころか、知らず知らずのうちに若い芽の成長を抑えしまうこともあります。
皆さんの職場にはこんなモティベーションを下げてしまうイマイチ君はいらっしゃいませんか。
イマイチ君の横顔
【同僚・先輩・後輩編】
- 人間味の無い人
- いつも他人に頼ってばかりの人
- ポジティブ(前向き)な発言を頭から否定し、ネガティブな発言ばかりする人
- 世の中の動きや常識を知らない人
- いつも人の悪口・陰口を言っている人
- 一生懸命していることを頭ごなしにバカにする人
- 言い出した人が損をするといって、何も言い出さないで陰で文句ばかり言っている人
- 無遅刻・無欠勤だけど働かない人
- いつも指示を待っている人
- 何をしても何の反応のない人
- 目の前にいる相手にメールで連絡する人
- 何度も同じ質問をする人(進歩のない人)
- 会議等でいつも眠そうな人(眠っている人)
- やる気なしオーラが全開の人(夢や目標のない人)
- だらしない服装や汚れた服装で出勤する人
- 人のうわさ話ばかりしている人
- 休暇と給与のことしか考えていない人
- 人の上げ足を取って機嫌をよくしている人
- 責任感のない人
- 被害妄想気味の人
- イマイチの意味が理解できない人
――など
このような人がたくさんいる組織だと、まともな人はストレスが溜まって仕方ありません。「当院にはこんなイマイチなのが多いんだよ」と愚痴をこぼしているだけでは職場は何も変わりません。当の本人は気づいていないのですから、まずは気付きをもってもらうことです。気付きによって、自分の発言や行動、仕事への姿勢がよくないことを認識してもらい、価値観に変化が現れれば、発言、行動、姿勢も一変してくるはずです。厄介なのは、自身が気付いていながらもイマイチ君のままであり続けている人です。このような人には、その都度きっぱりとダメ出しして矯正するしかありません。
でも、上司にイマイチな人物がいることも事実です。
【上司編】
- 部下の面倒をみない人(部下を育てられない人、育てない人)
- 部下の手柄を自分のモノ(横取り)にする人
- 部下の失敗は自分と無関係と知らないふりをする人
- 失敗を恐れ、部下に仕事を任せない人(自分でやってしまう人)
- 評論家の発言ばかりで何も行動しない人(行動できない人)
- 話しの話題が少なすぎる人
- 部下の良い点を見出すことができない人
- 今流の誉めて伸ばすことが理解せず、けなしてつぶそうとする人
- 「上から目線」でしか話せず、威張ってばかりの人
- テレビや新聞、ネット情報からの受け売りの話しかできない人
- 過去の同じ成功体験ばかり話する人
- 慕われていない人(人望のない人)
- 自分の感情コントロールができずに怒る人
- 自分の枠を固定して新たなチャレンジをしない人
- 露骨な差別をしている(特定の人ばかりをかわいがっている)人
- 業務をいつも個人の趣味に(ゴルフや釣り、パソコン等)無理に結び付けようとする人
- いつも保身に走っている人
- 時間外や休日等にも働いていることを必要以上にアピールしようとする人
- 上げ足を取って喜んでいる人
- 一方の意見ばかり聞いて判断している人
- 家族を大事にできない人
――など
部下は誰の鏡?
イマイチ君を野放しにする組織では、一般職員が今後の厳しい荒波を乗り越えていけるかどうか心配でなりません。部下は上司の鏡です。「仕事の進め方がまずい」「仕事に対する姿勢がなっていない」などと嘆く前に、自分自身が与えた影響の結果と捉えるべきではないでしょうか。上司は常に、前向きな姿勢を示し、組織を引っ張っていけば、きっと嘆きが賛美に変わることでしょう。
しかし、その上司の幹部が“患部”となっているケースもありますので紹介しておきましょう。
【幹部編】
- 未来を読めない人
- 明確な方向性を示せない人
- 自院の展望や夢を語れない人
- 全体最適を考えられない人
- ライバルの成功を素直に喜べない人
- 「ここの病院は・・・」とまるで他人ごとのような言い方を平気でする人
- 自院より劣る医療機関と比較して満足している人
- 自院を客観的に見ることができない人
- 人望のない(仁徳のない)人
- 発言がブレる人
- 過去の成功体験ばかりを幾度も振り返る人
- 自院の利益よりも個人の趣味や利益を優先する人
- 職員を活かせない、働かせればよいと考えている人
- 自分の役割を理解できていない人
- 責任転嫁をして問題点から逃げる人
- 医療人をお金だけで人を動かせると思っている人
- 職員の幸せを考えられない人
- 自分の周りをYESマンばかりで固めている人
- 裸の王様になっていることに気付かない人
- 何かにつけて“ツキ(運)”がない人(逃げてしまう人)
- 組織の“患部”になっていることに気付かない人
――など
当たり前のことですが、このような“患部”のいる組織に未来はありません。モティベーションの高い組織では、患部は自然と組織から去っていく傾向にあり、イマイチ君にとって居心地の良いのがモティベーションの低い組織です。どちらにイマイチ君が滞留する組織かは言うまでもありません。
「気付き」の教育
労働集約型の医療界ではそこに勤務する人が組織の質、医療の質を左右します。上記のイマイチ項目にいくつも当てはまる人が多い職場の未来は思いやられます。
人が本気で動き出す原動力は「気付き」なのですが、当の本人ほどなかなか気づかないのも事実です。知らず知らずのうちに自己防御に走ってしまいがちです。「なぜ、〇〇すべきなのか」「自分ならばどうするか」などをしっかり伝え、気付きのチャンスを持たせることもイマイチ君の増殖予防になります。何かにつけてできない理由(言いわけ)から口にするイマイチ君予備群には以下のような指導が効果的です。
- 一般的な例として「言い訳ばかりする人をどう思うか」意見を求める。複数の参加者がいるミーティングであれば該当者には最後に意見を求める。
- 意見を聞いた後、管理職は言い訳を聞きたいのではなく、現状と対策に関する状況が聞きたいことを伝え、確実に理解させる。
- 「いつまでならできる」「どのようなサポートをもらったらできる」「どこを変更したらできる」と自らが提案してもらえることが大事だと納得してもらう。
- 今後、できない理由から話始めた場合はとがめることを伝える。
先輩や上司、管理職はあくまで“フォローする係”であって、“責める係”ではないことを十分理解する必要があります。今時、ガミガミ叱っても怒鳴りつけても人の行動は変わりません。威嚇気味のパワハラ指導や注意などは論外です。今は本人が気付くよう仕向け、“良ければ誉め、悪ければ叱る”指導が当たり前になっています。
「教」という漢字は、親が善悪を注意して教えるだけではなく、子がその注意・教えを受け入れる意味も込められています。ですから、「教育」とは教え、育んでいくことです。特に育むことの大切さを意識したいものです。それが組織のモティベーション向上には不可欠な時代に突入しています。